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● 松葉(まつぱ)酒
新鮮な松葉(350グラム)を水洗いしないで刻み、ホワイトリカー
(1.8リットル)に砂糖(100グラム)と共に漬け込み、一カ月後に
中身を引き上げ、漉して飲みます。薄い琥珀色の松ヤニの香りが
する酒に仕上がります。
蒸し暑い夜の友、オン・ザ・ロックにぴったりです。
高血圧予防、不眠症に効きます。「本草綱目」には
「松葉は毛髪を生ず」とありますが、頭の悩みの解消に
なるかどうかは、判りません。
なお中国に伝わる不老長寿の薬酒「赤松仙酒」は、
赤松の葉、実、樹皮を酒に漬け、砂糖を加えて醗酵させ
たものと言われます。
● 紅花(べにばな)酒
紅花(古名を末摘花)はエジプト原産で、夏、アザミに 似た花をつけます。最上川中流の山形県村山地方が 主産地で「最上紅花」の名で知られ、せんべい状に 加工し乾燥させた「花餅」を、口紅の原料として京に 運びました。
行末は誰肌ふれむ紅の花 芭蕉
この紅花が口紅となって美女の唇に触れる前に、
甘口の酒に浸して飲んでしまおうという趣向です。
朝露のあるうちに花を摘み、杯に浮かべるだけです。
朱塗りの杯を選び、好きな女優さんの顔を思い浮かべて
口に運べば、唇に触れた気分に…。夢追い酒です。
民間療法では、陰干しした花びらを杯の清酒に
ごく少量入れて一日三回、食前に飲みます。
冷え性や生理痛などのご婦人の病気、産前産後の
保養に良いといいます。もちろん、男性が召し上がっても
構いません。
● 鮎(あゆ)酒
ピチピチした若い女性の軽やかな肢体に例えられる鮎を、
酒にして飲みましょう。白焼きした鮎を筒型の茶碗か鉢、
コップに入れ、熱燗の日本酒を注ぐだけですが、これが旨いです。
香魚の名がある鮎の香りが酒に移り、一口含めば
喉が鳴り、二口、三口と重ねるうちに陶然としてきます。
清楚な乙女を思わせる若鮎が酒に合いますが、
脂の載った年増といった感じの落ち鮎も捨て難いです。
迷うところです。
● 竹(たけ)酒
孟宗竹の若竹を二節か三節残して両端を斜めに切り落とし、
上部の節に穴を空けて酒を注ぎ込み、下端を地面に突き刺します。
回りに枯れ葉や枯れ枝を集めてたき火をすると、二、三十分で
ほどよく燗がつきます。いわば竹筒の炙り燗で、これは野遊びの流儀です。
竹の香りと竹の油(精分)が酒に滲み出て、極上の味になります。
盃も竹で作っておくと良いです。
料理屋風の竹酒は、厨房で燗をつけて運んでくるのが多いですが、
やはり目の前の囲炉裏で温めた方が面白いです。
太い青竹だと八合から一升の酒が入りますが、徳利と違って
筒に後どのくらい残っているか分からないのも興趣のうちでしょう。
宮城県白石市の鎌先温泉には、青竹を酒器にした名物の笹酒を
出す旅館があります。
これは近くの竹駒稲荷(岩沼市、日本三大稲荷の一つに
数えられる古社)に古くから伝わる酒だそうです。
西の神も東の神も、竹の酒が好きと見えます。
● 青梅(あおうめ)酒
焼酎に青梅と砂糖を漬けて造った果実酒が梅酒ですが、
これは清酒に梅酒に使ったカリカリの青梅を浮かべます。
酒器の涼しげな江戸切子のグラス(もちろん酒屋の景品
のコップでも構わない)に氷を入れ清酒(出来ればフルーティな
タイプの日本酒が良い)のオン・ザ・ロックにし、
青梅を一個、それに梅酒を少量注ぎ足します。
見た目も爽やかで、納涼の酒にふさわしいです。
そしてこの酒は、美人に似合います。
青梅に眉あつめたる美人かな 蕪村
梅酒の代わりにワインレッドの紫蘇ジュースを
少量入れれば、ロゼ風の「紫蘇酒」になります。
紫蘇ジュースの作り方は、赤紫蘇を入れた酢を
沸騰しない程度に煮て、砂糖を加えます。
酢1.8リットル、赤紫蘇の葉500グラム、砂糖2キロ
が分量の目安です。
青梅酒も紫蘇酒も洋風の感じになるので、
肴は陸(おか)キャビアの冷製が良いでしょう。
秋田特産のトンブリ(箒草の実)を卵黄で練り、
醤油を垂らしてレモンを絞ります。
形状も舌触りもキャビアそっくりで、次第に
酔ってくるとキャビアに限りなく近くなります。
なお古くから「紫蘇酒」は、焼酎に紫蘇、
桂皮、茴香(ういきょう)などを加えて作った
薬用酒です。健胃整腸の効があるそうです。
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