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● 海蛸(ほや)酒
魚でもない、貝でもない不思議ら生き物で、保夜とも書く。幼時は海中を泳ぎ回り、
成長すると海底の岩などに着床、根を張って大人の拳くらいの大きさに育ちます。
外形から「海のパイナップル」と呼ばれますが、原索動物(元は魚のように脊椎があった)
に分類されます。
好んで食べるのは、東北でも太平洋側の岩手、宮城県です。イボイボの厚い外皮を外し、
琵琶色の筋膜と内臓を食用にします。生食、それも酢の物が一般的ですが、吸い物にしても
焼いてもいいし、塩辛、粕漬けもおいしいです。味は筆舌に尽くし難いですが、「初恋の
キスの味」ならまだしも「熟れた女体の匂い」とのたもうたご仁もいらっしゃいました。
「山藤の咲くころから味がのる」「キュウリと共に育つ」と言われ、これからが旬です。
燻製の海蛸が手に入ったので、試しに熱燗の茶碗酒に入れてみました。待つことしばし、
山藤の下で交わす老いらくの恋の接吻の味は、かくやあらんと思われました。
● 小鳥(ことり)酒
愛鳥週間(バードウィーク)の季節なのにと叱られるかも知れませんが、これは山国
に伝わる小鳥酒の話です。
羽毛と臓物を取り除き、背開きにした小鳥を焼きます。スズメ焼きを焼きを思い浮か
べていただければ、調理法は飲み込めていただけると思います。香ばしく焼き上がったら
大きめの器に入れ、小鳥の上から熱燗を注ぎます。
可愛い小鳥の残酷な姿を目にするのが嫌なので、私は口にしたことはありませんが、
同じ小鳥でも昆虫を常食している小鳥の酒の方が美味だそうです。あくまでも伝聞なので、
念のために。
市販のタレ焼きの焼き鳥で、試してみてもよろしいでしょう。
● 菖蒲(しょうぶ)酒
香気を放つ菖蒲の根を細かく刻んで浸した酒です。古来から知られる酒で、あやめ酒
とも呼びます。 端午の節句に供えられ、雛祭りの白酒に相応します。飲むと邪気を払うと伝えられています。
江戸時代の百科事典ともいうべき「古今要覧考」には、根は「一寸九節」のものを用いる
とあり、別に花を浸した酒を「菖花」と称すると記述してあります。
● 筍(たけのこ)酒
野趣たっぷりな酒です。野外、それも若葉の下で、豪快に飲みたいですね。
掘ったばかりの筍の皮を剥いて輪切りにし、小鉢の熱燗に入れます。
野山の息吹を丸ごと飲むように、グイッとやります。
掘りたてはえぐみがなく、生でもたべられます。皮つきのまま焼いて熱々の酒に
浸しても風味があります。
山椒の芽があれば、上に散らすと香りが高くなります。
肴は、筍の刺し身がいいですね。
青竹を用いる「竹酒」は、もう少し後の楽しみにしましょう。
● 狐(きつね)酒
揚げ豆腐をよく焼いて器に入れ、上から熱燗を注ぎます。好みで少し砂糖を入れてもいいです。
油揚は田の神の使わしめ狐の好物とされるので、狐酒としゃれてみました。
油揚は薄揚げではなく、厚揚げを使います。「狐にだまされたと思って、飲んでみでけろ。」
「こりゃなんだ」と叫びたくなるようなおいしい酒です。
こんがり焼けた狐色の油揚げの香ばしさと豆腐の豆の甘みがかすかに酒に移り、
旨さの級が上がります。油臭さが気になれば、熱湯をかけ油抜きしてから焼くといいです。
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