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● 桜酒
桜の本字は櫻、「二貝の女が木にかかる」と覚えましたが、
二階の女性が気にかかる年頃が過ぎると酒が気になります。
開花の知らせを聞くと、酒を携え、恋人に逢いに行くように
いそいそと出掛けます。
「待つ花」に始まり「初花」「盛りの花」「名残の花」と
移りましょう。
その時々の花を眺めながら盃に花びらを浮かべて飲むのが、
桜酒です。それも花をむしらずに、ヒラヒラ散る花弁を盃で
受けてこそ風流というものです。
桜前線が通り抜けた後も、山に登ればまだまだ花を愛でることが
出来ます。標高100メートル高くなると開花日が三〜五日遅れます。
山桜や八重桜の見ごろはそめいよしのよりもっと後になります。
瓢箪に酒を詰め、友を誘い、いざ山遊びに…
八重桜の塩漬けは桜湯に使われますが、これを焼酎のお湯割りに
入れても美しく、かつ美味です。この「桜割り」なら一年中、桜が
楽しめます。
桜はバラ科の植物、親類のバラ−薔薇の花びらを酒に浮かべれば
「薔薇酒」になるでしょう。
● 人肌(ひとはだ)酒
燗の具合は、人肌が良いです。人の健康時体温は36.5度前後、
この温かさの酒が人肌酒です。
芳香が高く、舌触りがきめ細かな酒は、ぬる目の燗の方が本来の
味が保たれるといいます。
「冷やと親の意見は後で効く」の諺があるように、冷やした酒は
喉ごしが良いので、つい飲み過ぎるきらいがあります。
後で急速に酔いが回ってきますが、その点、燗酒は吸収が早いので、
自分のペースを守って飲めます。
● 若布(わかめ)酒
若布は若女に通じるところから、若返りの薬として、あるいは
神の供え物として昔から大切にされて来ました。
若いほど味も香りも良いので、芽が出始める早春が旬となります。
燗酒を満たしたコップに生の若布、あるいは塩抜きした若布を
一、二片入れて揺ら揺らさせれば若布酒となります。
● 貝柱(かいばしら)酒
帆立て貝の貝柱の干物を使います。事前に酒に貝柱を一個入れておいて、 燗をつけて飲みます。帆立て貝の旨みが酒に移り、かすかに北の海の味が します。飲み終えた貝柱は、味噌に漬けて数日置くと、格好の 酒の肴になります。
● 雲丹(うに)酒
ウニは雲丹と書くのが一般的ですが、厳密には生きている時が
海胆、海栗で、卵巣を塩蔵、加工すると雲丹、海丹となります。
この酒は生ウニを使うので、正確には海胆酒でしょう。
ウニに熱燗を注ぎます。器は大きい方が、ウニはたっぷりの方が良いです。
ウニには朱が似合います。朱塗りの鉢に生きの良いウニを山の
ように盛り、熱燗を満たしたのを豪快に飲みます。
潮の香りにウニの味が交じり、酒はうっすらと白く濁りますが、
まるでしぶきを上げる黒潮を飲み干すようで、初めて飲んだ時は
感動してしまいました。
味を酒に奪われたウニは、惜しげもなく捨てるのが
男の作法でしょう。
ウニの旬は卵巣の成熟する春から夏にかけて、
雲丹酒もこれからますます美味になります。
● 海老(えび)酒
海老はお金が好きと見えて、世界の海老は富める国に
流れていきます。
日本は世界一の海老消費国です。
酒の肴にするだけではなく、海老を酒にして飲んでみましょう。
海老の皮をはぎ、腸を除き、軽く塩を振って強火で焼きます。
それを大きな杯に入れ、熱燗を注ぎ、二、三分経ってからいただきます。
海老特有の甘味が滲み、柔らかな味の酒になります。
頭ごと殻付きのまま焼いたのを用いても、野趣があります。
海老は冷凍ではなくまだピクピク動く生きた奴が、それも出来れば
桜海老より車海老の方が良いです。
車に酒は地獄ですが、酒に車(海老)は極楽です。
この狂喜の味を知ると、煎餅のコマーシャルではないですが、もう
「止まらない、止まらない」です。
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